1月29日に某新聞記事として掲載された九州大学副学長の吉岡斉教授の「脱原発社会へのシナリオ」論文に出会った。東日本大震災による福島第一原発事故に端を発して、反原発、脱原発、卒原発・・・が叫ばれている中、原発政策の研究者の吉岡氏の提起は、現実路線としての説得力を持つものである。
教授は、日本における原発政策の経緯や、福島第一原発事故以降の世界の動向等を検証しても、我が国は、脱原発に向けて舵を切ることが妥当な判断とした上で、脱原発への実効的なロードマップを検討するため、「柔軟戦略」を提起されている。
教授の柔軟戦略は、具体的に3点からの骨子となっている。①新増設の禁止、既設炉の段階的廃止の方針を明確に示す。②安全基準を見直し、新基準にもとづきすべての原子炉を再審査する。③それにより、三つのランクに分類する。相対的危険度の高い原子炉(Cランク)を即時廃止する。グレーゾーンの原子炉(Bランク)は当面、再稼働を認めない。危険度の相対的に低い原子炉(Aランク)について、「無防備状態」を克服することを条件として、仮免許での再稼働を認める。
さらに脱原発を円滑に進める上で脱原発工学の構築が不可欠だとしている。この分野の研究分野はまだ未開の分野で今後推進されることで脱原発に拍車をかけることにもなる。そして教授は、最終的には、国民の意思を最大限尊重しなければならないと結んでいる。