孫子の兵法は「兵とは国の大事なり。死生の地、滅亡の道は、察せざる可からざるなり。故に之れを経るに五を以てし、之れを効らかにするに計を以てし、以て其の情を索む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」という有名な言葉で計編からはじまるリーダー必読の書である。この五事(道・天・地・将・法)は、その後、兵法戦略として幅広く活用されてきた。道とは民衆の意志を統治者に同化させる理念で、組織でいえばトップと現場の意識の共有である。天とは、四季の定めを勝利に導く理念で、組織でいえば市政の現場である市民意識をいかに把握し活用するかである。地は、地形の分析の理念であり、組織でいえば社会情勢に如何に対応しているかどうかである。将は、物事を明察できる智力、部下からの信頼、部下を思いやる仁慈の心、困難に挫けない勇気、法を維持する厳格さ等、リーダーが備える能力のことである。法は組織の部署割を定めた法や組織を監督する官僚の職権を定めた法など指揮権に関する法律のことであり、リーダーはこれら五事を肝に銘じ統治することの重要性を求めている。
またこの五事は、組織論としても多く展開され、正五角形(五稜郭)の組織構築としてペンタゴン(アメリカ国防省)における戦略にも生かされている。この正五角形による戦略的組織論は、リーダーが正五角形の中心に位置し、その星(角)にも等間隔で位置しておりリーダーの意志がそのまま現場に同時に伝わるという五事の道の理念が活かされている。また正五角形(五稜郭)は外的からも多重防御できることから外的に対してもスキがなく死角がないという理想的な形だと言われている。
私は、京都市職員の不祥事の根絶に向けて、公務員倫理の評価システムの確立や、リーダーの現場主義思想の徹底等、多くの解決具体策を提唱しているが、不祥事を許さず起さない組織文化を構築する観点から、区役所を市長の直轄下に組織改変することを提起したい。これは、死角のない組織の確立を考える時、孫子の兵法に学ぶことが多いと考えるからである。ネットワーク化組織やコンパクトな組織構築が求められている今、市長が天守閣のような高い位置にいては組織の危機管理は構築できない。市長が現場である区役所を自らの直轄組織にすることで、まさに平城(ひらじろ)として戦略的組織構築が可能になるものと確信している。
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